i してない?
前回「i してる?」というエッセイを書いて、今回はその反対のタイトル。えー、携帯電話のことが、三回も続くの?
そーなんです。だって、ケータイコンテンツとして、召しませMoney!売ってるし、こんどブラインドコードも売り出すし、わたくしにとってケータイ業界は、超ホットな話題なのだ。
というのは、もちろん本音ですが、それに加えて、iモードについて、読者さまからメールで詳しく教えていただいたのだ。なんと、わざわざドコモに問い合わせまでしてくださって、正確な情報を教えていただきました。
というわけで、奇しくも連載第一回となった「だれがために鍵は閉じる」の補足として、このエッセイを、正確な情報をお教えくださった読者さまに捧げます。
さて、なにが「問題」だったかというと、ぼくは「だれがために鍵は閉じる」と題したエッセイの中で、iモードを完全に閉鎖した環境だと断言するような書き方をした。この主張は、ドコモの端末でしか実行できない環境という意味では、まあ、正しい。ところが、いま売れに売れまくっているiPhoneを、オープンな環境と書いたのは間違いだった。iPhoneは、アップルが完全にコントロールしているので、結局のところ、ドコモにコントロールされたiモードと変わらない。
でも、もちろん違いはある。それは、アップルがメーカーで、ドコモがキャリアだというところだ。
アップルは、ブランドの力で、自由にキャリアを選べる。とはいえ、通信回線という「土管」に手を出せるわけではないので、「App Store」というお店を出すことにした。
ドコモはキャリアだ。「土管」を管理運営している。だから、そこに「お店」を出してもらう立場なのだ。土管を「道路」と考えるとわかりやすいかもしれないね。道沿いに、どんどんお店を出してもらって、道に人がたくさん通れば、ドコモは儲かる。すべてのお店も儲かれば万々歳だけど、残念ながら、じっさいのお店と同じで、繁盛するところもあれば、つぶれていくところもある。それはドコモの知ったこっちゃないわけだ。
まるで大家と店子の関係みたいだね。大家さんとしては、自分が店を出して、店子さんの経営を邪魔しちゃいけない。だからドコモは、だれか個人が、iアプリを開発したとしても、基本的にはなにもしてくれない。その個人が、自分でHTMLを組んで公表するか、あるいはすでにiモード上にサイトを持っている会社に頼んで、載せてもらいなさいというスタンスだ。
その点、アップルは、道沿いにお店を出している立場。だれか個人がiPhone用のアプリを開発したら、それをアップルが審査して、アップルの基準に適合したら、App Storeに載せてもらえる。ただし、そのアプリはiPhoneでしか動きません。
ということらしい。
こう聞くと、むしろアップルの方が閉鎖的にさえ見えてくるからおもしろいね。まあ、OSからそれを実行するマシンまで、すべてを自社でコントロールしている会社だから、考えてみれば当然のことだ。マックOSは、マックという専用端末でしか動かない。iOSも、iPhone(とiPad)という専用端末でしか動かない。それは、ドコモのiモードと同じなのだ。ただ、ドコモよりアップルの方がブランドイメージが高いってだけでね。
さあ、そんな中、ドコモはついに、iモードを、端末から切り離して、「サービス」として独立させた。というのが、前回の「i してる?」と題したエッセイの内容だ。
iモードが端末から切り離されると、iアプリの存在理由がなくなるんじゃないか。という心配を読者さまはされていた。
その通りだと思う。
スマートフォンには、スマートフォンのOSがあるので、そのOS上で快適に動作するアプリを動かした方がいいに決まってる。そうでなくても、iPhoneや、Androidといったスマートフォンは、世界中の開発者が集まっているので、iモードの比ではないスピードでアプリも増えていくしね。
すると、徐々にiモードは使われなくなるかもしれない。いまは、みんなiモードメールを使っているけど、それだって、HTMLメールで代用できるはずだ。だいたい、キャリア自身がはじめた、デコレーションメールというのがHTMLなんだから、すでに、自分で自分の首を絞めてるわけだ。
というわけで、iモードは徐々に使われなくなり、キャリアが一番恐れている「土管屋」になる日も、そう遠くないのかもしれない。ぼくは「だれがために鍵は閉じる」では、そう考えた。iモードが、意外(?)とオープンだというのを知らなかったし、spモードが、まだ正式発表されてなかったし。
それでもドコモは、spモードで、iモードを端末から切り離す決断をしたのだから、すごいと思う。
何年か後に、ドコモの決断が、英断と呼ばれる日がくるんだろうか? それは、だれにもわからないけど、なんとなく、大丈夫な気がするんだよね。
というのは、キャリアには「コンテンツ決済サービス」があるからね。ドコモを例にすれば、iモードにあるサイトからなにか買うと、お客さんは自動的に「通信料」に加算して、お金を払うことができる。クレジットカードなどを、サイトごとに提示する必要がないので安心感もあるし、200円とか300円という少額の決済に、クレジットカードは、あまりなじまないという問題も無視できる。クレジットカードだと、なんで、こんな高い手数料を取られるのかと疑問に思うことがあるからね。(すいません、PCで売ってる、召しませMoney!の小説版がそうです)
このシステムを、iモード以外でも使えるなら、キャリアの存在感は示せるだろう。現にドコモは、スマートフォン向けサービスの拡充が大事として、コンテンツ決済サービスと、おサイフケータイや、i
チャネルなども、スマートフォンに取り込んでいきたいそうだ。WIRELESS JAPAN 2010の講演セッションで、ドコモ・スマートフォン事業推進室の木戸氏が、そう語っていた(と報道されている)。
でも、ドコモがどんなにがんばったって、iモードが端末から切り離されたら、i するのも、i しないのも、けっきょくは、お客さん次第。ここまで、最大手のドコモを例に書いているけど、auもソフトバンクも事情は同じだ。
ケータイコンテンツを作る末席にいる身としては、これからのケータイ事情は、すごーく気になるね。変わることは怖いことだ。でも、変わる必要は絶対にある。技術というのは、いつかどこかで、次世代に移行する運命にあるんだから。
以上、三回に渡って、各論が迷走してお恥ずかしい限りだけど、結論は第一回と変わらず。これから訪れる変化が、ぼくらにとって、ハッピーであることを願うばかりです。
といったところで、ケータイ・エッセイを終わるとしよう。
Copyright © TERU All Rights Reserved.