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「ハーイ、みなさん。あたしが、かの有名なアシュレモーナ。モーナって呼んでくれればいいよ」
モーナは、ピンナップガールのようにポーズを取ると、カメラの前でパチンとウィンクをしてみせた。
「バカ」
モーナの後ろで声がした。
「あんたね」
モーナが振り返る。そこにはラミルスがいた。
「いま、バカって言ったでしょ、バカって」
「われながら的確な表現だわ」
「あたしのどこが、バカだって言うのよ」
「数え切れないけど、まずは、そのイカれた格好ね。そんな格好をしているから、女神だとか天使だかと間違われるんです」
「あら。しょうがないじゃない、美しいものは隠せないよ」
「よく言うわ」
「あんたこそ、そんな黒い服ばっか着てるから死神と間違われるんだよ。まあ確かに、そういう辛気くさい顔つきだけどさ」
「なんとでも言いなさい。わたしはわたしの仕事をするだけです」
「あたしだってそうさ。今月はもう三件も願いを叶えたんだ。忙しいったらありゃしない」
「わたしなど、今月はすでに二百六十人も魂を扱いましたよ」
「ふん。あんたとあたしじゃ、やり方が違うんだ。数は問題じゃない」
「まあね」
ラミルスは、肩をすくめながら言った。
「願いを叶えるものと、死を司るものか。どちらも魂の浄化という目的は同じでも、やり方はまるで違う」
「そう。それが、あたしたちの選んだ道だ」
「もう、二千三百年か…… ずいぶん長いこと、この仕事をしているわね。お互い」
「確かに、あんたといがみ合うのにも飽きてきたよ」
「モーナ。それもまた、あなたが自分で選んだ道でしょうに」
「ふん」
モーナは、鼻を鳴らした。
「さあ死神もどきとバカ話してる場合じゃなかった。今日はもう一件、願いを叶える予定だったんだ」
「わたしこそ、女神もどきと話している場合じゃないわ」
モーナとラミルスは、一瞬顔を見合わせると、その場から消えた。ポワンと。 |
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